根岸拓朗
統合失調症の治療で香川県立丸亀病院(丸亀市)に入院中に自死した男性(当時38)の遺族が、病院を運営する県に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)は27日、自死の危険性に関する説明を怠ったとして県に賠償を命じた二審・高松高裁判決を破棄し、請求を棄却する判決を言い渡した。遺族の逆転敗訴が確定した。
1997年から丸亀病院への入院を繰り返していた男性は、7回目の入院中だった2010年、病院から無断で外出して近くの建物から飛び降りた。
遺族が「病院が自死を防ぐ義務を怠った」と提訴したが、高松地裁は請求を棄却。二審の高松高裁は、自死は予見できなかったとして、防止についての病院の責任は認めなかったが、「病院が無断外出の危険性について説明義務を果たさなかったことで、男性が他の病院と比べて入院先を選ぶ『自己決定権』が侵害された」と判断。県に110万円の賠償を命じた。
しかし、第二小法廷は、無断外出による自死の危険性がこの病院で特に高かったわけではない、と指摘。「男性が、無断外出の防止策の内容で病院を選ぼうという意向があったとはうかがわれない」として、県に説明義務違反はなかったと結論づけた。(根岸拓朗)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル